スリランカに吹く風 Sri Lanka’s Winds

Vol.13 『雨に濡れたバックパック』

 もう一箇所増やした北部でのレッスンが軌道に乗り、一旦日本へ帰国し必要なものを揃え 2ヶ月後またスリランカへ向かった。最初に始めた東部の教室では殆どが女子生徒で感受性豊かな本当に可愛い少女たちで楽しかったのだが、今回始めた北部の教室では10代後半の男子生徒が多く正直言って私には少し苦手だった。何か言うと反抗的な態度になり少し困っていた。
 スリランカに着き空港からこの北部の教室までは車でかなりの時間がかかるがその途中大雨による洪水で立ち往生することがよくあった。運転手さんが「洪水で今日はもうこれ以上進めないのでどこかゲストハウスを探します」と言って探してきてくれた。「ここは今日あと一人で満室だから私はどこか泊まれるところを探し明日の朝迎えに来ます」と言って私をそのゲストハウスに置いて行った。豪雨の中寂しい場所にある小さなゲストハウスで心細い思いでいるとバックパックを背負った女性が入ってきた。目があった瞬間女性は 「日本の方ですか?」とおっしゃり驚いた。
 この日本人女性は中学校の先生で毎年休暇を利用してバックパックを背負ってアジア各地をひとり旅なさるそうで今年はスリランカに来たそうです。 心細さも解消し話が弾み私がここでやっていること、男子生徒とのコ ミュニケーションがうまく取れないことを話すと「反抗的なことを言うその彼らのエネルギーを前向きな良いエネルギーに転換するんです!甘やかしちゃだめ!」とはっきり言われ私は何か目が覚めた気がした。
 翌朝、その女性と日本での連絡先を交換し、私は北部の教室へ向かった。すると、これまで反抗的だった男子生徒が「内戦中はなんとかして生き延びたいと思った。でも内戦が終わると生きていくことがどんなに大変かを知りヤケになっていた。でも
生きているから息をしているからクラリネットに息を吹き込むことができ音が出せるのですね!」と言って熱心にクラリネットを練習している。

当たり前のようにクラリネットを吹いてきた私にとってこの言葉は生涯忘れられない言葉である。

筆者寄稿文 2021.1.17

筆者撮影

この文章を頂いた時のスリランカのコロンボの気候は以上のようだった。
気温だけでも同じアジアでありながら、、、こんなにも違う。また調べてみると、スリランカは北海道より小さな国土でありながら、地域により大きく気候が異なるようです。

“雨が多い南西部から中央部の高原地帯にかけてはウエットゾーン、比較的雨が少ない北部、東部、南東部はドライゾーンと呼ばれて区別されています。”

世界遺産と旅情報サイト 引用

 天候は、国や地域、そして人間の人格にも影響を与えていることは、間違いないことだと思います。とくに「雨」は人間の営みに絶対に必要な資源としてばかりでなく、心象の具現化として、詩や小説あるいは映画などのテーマにもなってきました。たとえば詩人野口雨情の童謡たち、監督:ジャック・ドゥミ、音楽:ミシェル・ルグランの映画シェルブールの雨傘ミュージカル映画の傑作でもある『雨に唄えば』など、、、数えればキリがありません。
雨への想いは、世界の共通語なのかもしれません。

本題とは逸れますが、現在、緊急宣言などによるStay-Homeにて何かと不自由な生活を送ってると思います。しかし季節はそれとは関係なく流れていきます。このような時だから、その季節を感じることができるのかもしれません。それによって何かの発見があるかもしれません。                          

写真:河合 俊治

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写真:吉田 絵理

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